医薬品メーカーと卸会社との関係

医薬品メーカーと卸会社との関係

このエントリーをはてなブックマークに追加  

日本の医薬品販売方法は、薬種問屋時代の名残を引きずっています。つまり、メーカが直接販売や納品を行うのではなく、卸業者が仲介に入ることで成り立たせているのです。かつて、卸業者はメーカーの出先機関のような存在でした。しかし、業界を取り巻く変化は卸業者にも影響を与えているのです。

 

医薬品メーカーと卸会社との関係

 

国内の医薬品卸売業のライセンスを持つ事業主は約1300社といわれています。ただ、実際に医薬品卸売業を行っているのは、日本医薬品卸売連合加盟の91社(2013年4月時点)と。日本ジェネリック医薬品販社協会加盟の83社(2013年1月時点)です。

 

卸業者は、病院や薬局と価格交渉を行い薬を納入するといった業務を行います。以前は、卸業者が取引先と価格交渉を行った結果値引きとなった場合、その値引き分をメーカーが保障したり、リベートを支払ったりしていました。これは古くからの商習慣であり、事実上メーカーが価格設定を行い、主導権を握っていたのです。

 

しかしその後、価格の透明性を保つため、この値引き保証は廃止されることとなります。さらに、1991年に導入された新仕切価制によって、メーカーは取引先との直接取引や価格交渉への介入ができなくなったのです。

 

スポンサーリンク

 

このような流れから、いままでメーカーに従属的だった卸業者の立場が独立的なものになりました。しかし、当初目指されていた価格の透明性については、むしろ不透明になったという意見もあります。今までのメーカー、卸業者、医療機関の三者がお互いに監視し合っている状況に比べ二者間で双方の思惑を一致させることは難しいことではないからです。

 

また、卸業者は有益な医薬品の販売を行うより、利益率の良い製品を販売する傾向が強まったとも言われています。

 

流通ネットワークの変化

 

新仕切価制が導入されたことで、メーカーと卸業者の役割が明確になりました。そして、流通ネットワネットワーク上で医療機関と強いつながりを持つ卸業者の役割は、さらに強くなったのです。

 

それを裏付けるように、業界トップ3であるメディパルホールディングス、アルフレッサは年間売上2兆円を突破、スズケンについても1兆5000億円を突破しており、いずれも主力医薬品メーカーの売上を上回っているのです。

 

また、単なる医薬品の卸から、総合卸業者へと転身したケースもあります。前記したメディパルホールディングスはとは、業界最大手であったメディセオと日用品雑貨卸のパルタックが2006年に合併して誕生した企業で、全くの異業種間でも合併でしたが、2012年度には2兆7500億円もの売上を計上しました。

 

こうした業界を取り巻く変化により、医薬品卸業界全体の売上は上昇傾向にあります。しかし、相次ぐ吸収、合併に卸業者の数自体は減少しており、一部の大手が企業規模を拡大しているのです。医療流通システムの改革はまだまだ発展途上であり、業界再編の動きは今後も続きそうです。




このエントリーをはてなブックマークに追加