日本のゲノム創薬を支えるコンソーシアム

日本のゲノム創薬を支えるコンソーシアム

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ゲノム創薬には、幅広い分野からの人材と最新の施設が必要です。欧米に比べ規模の小さい日本の医薬品メーカーは、これらを負担するために共同体を作って対応しようとしています。

 

日本のゲノム創薬を支えるコンソーシアム

 

人間の体が機能するためには、たんぱく質が必要で、そのたんぱく質を作りだすシステムの設計図にあたるのが遺伝子です。ヒトゲノムの解読により、一人の人間が持つ遺伝子の数は、当初予想の半分以下だということがわかりました。

 

さらに一つの遺伝子が、いくつかのたんぱく質を作り出していることも明らかになりました。これらのことにより、病気を診断し、治療技術を開発するためには、たんぱく質の解析が必須であることがはっきりしてきました。つまり、医薬品業界の将来を担うゲノム創薬の実現には、たんぱく質の解析技術がとても重要であることがわかったのです。

 

2001年日本製薬工業協会(製薬協)に加盟している22社が、「たんぱく質構造解析コンソーシアム」を設立し、ゲノム創薬の基本的なデータを集めることにしました。そしてたんぱく質の解析を行うため、兵庫県播磨科学公園都市の第3世代大型放射光(X線)施設Spring-8に専用ビームライン(強い光を当てることによって分子の構造解析を行う放射光設備)を建てました。

 

これまでたんぱく質を大きな結晶にしなければ、3次元立体構造のたんぱく質の解析はできなかったのですが、この最新の施設により、高輝度放射光をあてることで微小結晶のまま構造解析が可能になりました。今後はデータ情報の質が上がり、費やす時間や費用も削減できることが期待されます。

 

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これまでは、酵素や受容体の標的たんぱく質のメカニズムが明らかにされないまま、創薬の研究が進められてきました。しかも、おびただしい数の化合物を一つずつスクリーニングするという手間がありました。

 

しかし、このコンソーシアムのプロジェクトで、発病に関する標的たんぱく質とその複合体の立体的構造と機能の関わりが明らかになり、候補化合物を効率良く探し出し、医薬品設計をすることができるようになりました。副作用の少ない薬の開発も今後は、より簡単になってくるでしょう。

 

 

たんぱく質解析が宇宙でも始まる

 

宇宙の微小重力環境において、クオリティーの高いたんぱく質の結晶を作ろうという試みがあります。すでに2002年〜06年の間に国際宇宙ステーションにおいて6回の実験が行われ、08年にスタートした有人実験施設「きぼう」でも実験が続いています。

 

この取組みに、たんぱく質構造解析コンソーシアムは率先して協力しています。宇宙空間という特殊な環境のもとで、たんぱく質が生成・分化される様子や、DNAによって複製や修復がされる仕組みを、徹底的に解明しようとしているのです。

 

地球上と異なる環境の宇宙では、これまでの実験により、地球では考えられないような形状のたんぱく質の結晶が生成されたりして、こうしたことが、インフルエンザやアレルギーの新たな治療薬開発に応用されているようです。




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