治験の問題点について。新しい承認審査機構の働き

治験の問題点について。新しい承認審査機構の働き

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医薬品安全性監視体制が確立されると、国内の治験環境はさらに厳格なものになりました。しかし、一般に試験システム自体が浸透しておらず、、その重要性も認知されていません。そのため、国内の治験環境づくりはなかなか進まないのです。

 

治験の問題点について。新しい承認審査機構の働き

 

1997年、「医薬品の臨床実験の実施に関する省令」が制定され、新たなGCP基準となりました。それまでの臨床実験は、日米欧3極医薬品規制調査国際会議で合意したICHレギュレーションに基づく方法に改善されたのです。

 

これにより、文書による被験者の同意取得や、治験の適正評価のため、第三者の監査役を設置するといった、新たな遵守事項が設定されました。特に、被験者の同意を得る際には記名に加え、捺印を押す必要もあります。治験体制が厳格になるほど躊躇する者も増え、被験者の確保が難しくなり、結果治験の開始が遅れるという事態を招いていました。

 

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また、新たな治験実施基準を満たす医療機関ばかりではなく、日本の治験環境がいかに乏しいかが明白になったのです。また、旧厚生省でブリッジリング試験が認可されると、欧米のデータを基にした簡易試験のみで承認申請が行えるようになったため、国内での治験はますます減少したのです。

 

日本で治験を行う場合、時間がかかり、コストの割に得られるデータも少ないと言われています。しかし、外国では治験システムの整備が進んでいるため、治験を外国で行い、ブリッジリング試験によって国内承認申請を行うという流れをとる日本メーカーが急激に増えているのです。

 

1993年ごろ、国内の治験届出数は160件でした。しかし、2000年にはたった63件となってしまったのです。新GDP基準が出来上がった1997年付近を境に、国内治験実施件数は激減した事がわかります。

 

治験の空洞化と呼ばれるこのような現象は、日本の治験環境の整備を遅らせることになります。そして、日本の医薬品開発能力は、欧米にますます差をつけられてしまうでしょう。さらに、海外メーカーは、外国で治験を行った新薬を次々に日本に持ち込み、国内医薬品市場におけるシェアを拡大していきます。

 

それに対抗するため、日本メーカーは外国での治験をさらに増やす動きに出るため、日本の治験環境はますます遅れをとることになります。

 

 

新しい承認審査機構の可能性について

 

このような現状から脱却するため、2004年、厚生労働省は医薬品医療機器総合機構を設立し、治験の迅速化を図っています。しかしこの機構は、医薬品の開発を促進する一方、安全審査と監視を行うという両極端の性質を持つため、新たな薬害を引き起こす可能性が示唆されています。

 

また、職員に関しても民間からの起用を重視していますが、製薬企業出身者が多く採用される可能性もあり、特定の企業に便宜を図るといった事態が生じるのではないかと危惧されています。




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