世界の医薬品市場の問題点について

世界の医薬品市場の問題点について

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古くから、医薬品は儲かるものとして認識されていました。ほんの少量の化合物が、非常に高価な代物として売られてきたからです。しかし、それは市場を守ってこそ得られる利益であり、医薬品業界における市場の確保、拡大こそが新たな課題となっています。

 

世界の医薬品市場の問題点について

 

長年、欧米の主力医薬品メーカはアメリカ、日本、ヨーロッパの先進国相手にマーケットを広げてきました。保険制度の整っている先進国では、医療費の支給額が安定しており、高価な医薬品の普及率も高いからです。

 

しかし、ここ数年は、アメリカや日本での医薬品市場の成長率は低迷しており、逆にブラジル、インド、中国、ロシアといったBRICSと呼ばれる国々での成長率が1〜2割程度で推移しています。また、世界の医薬品市場の売上中、上昇した部分の5割以上が新興国での市場拡大によるものなのです。

 

中国市場を例に見ると、2011年には500億ドルを達成し、日本に続く第三位に食い込もうとしています。もともと多くの人口を抱えているこれらの国々で、今より保険制度や高度な医療技術が整えば、より多くの、また高価な医薬品の需要が高まることが予想できます。

 

それば、大きなビジネスチャンスであり、実際主力医薬品メーカーはこぞって、新興国メインの販売戦略をとり始めています。つまり、世界の医薬品市場は多極化が進みつつあるのです。

 

アメリカのファイザー、イギリスンのアストラゼネカ、スイスのノバルティス・ファーマ、ドイツのバイエルといった世界の主力製薬メーカーは、日本国内と同等の従業員数を中国現地で雇い、医薬品研究開発センターも設立しました。

 

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新興国進出には様々な課題が残る

 

では、日本メーカーの海外での売上はどんな状況でしょうか。実は、2011年度に前年比6.8%減で、これまでの成長が頭打ちとなりました。進む円高と、多くの主力医薬品が特許切れを起こしたことが原因と考えられています。売上50%以上を海外が海外にある、国内1位の武田薬品をを例にとると、タケプロンやアクトスといった主力医薬品が特許切れを迎え、売上を大きく落としました。

 

また、武田薬品同様海外での売上比率の高いアステラス、第一三共、エーザイについても同じ原因で苦戦を強いられています。しかし、最大の要因は、日本の企業が今だアメリカ市場から脱却できず、他国メーカーに比べて新興国への進出が遅れている事だと言われています。

 

もちろん日本のメーカーも、新興国での基盤強化を推し進めているのですが、欧米の主力メーカーは一世紀も前から新興国市場に進出しています。既に欧米メーカーの基盤がある中で、日本のメーカーが新たな販路を見出すのは簡単なことではありません。

 

また、2012年の中国での反日デモで、日本のメーカーに対する風当たりの強い国が存在することも改めて認識されました。次節では、如何にこの様な問題を克服し、新興国進出を進めているのかについて述べたいと思います。




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