医療と薬を分ける医薬分業とは何か?

医療と薬を分ける医薬分業とは何か?

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病院や診療所を受診すると、治療薬も一緒に提供されてきたのがかつての国内の医療制度でした。ですが、近年では大病院における薬の待ち時間の問題や、医療機関が薬価差益のために無駄に薬を投与する、いわゆる薬漬け医療の問題を解消する為に、医療行為と薬の提供を分ける医薬分業政策が推進されています。

 

医療と薬を分ける医薬分業とは何か?厚生労働省による推進

 

医薬分業においての理想は、医療機関では処方箋のみを作成、患者に提供し、それを差し出された調剤薬局が薬を販売するというものです。医療機関は、薬を直接処方することはありません。このシステムは74年に旧厚生省が制度化しましたが、薬を売る事も収益の一部であった医療機関は中々その既得権益を手放そうとしませんでした。

 

 

医薬分業が進んだのは、薬価を引き下げ薬価差益を削減する方策などが試みられた、90年代後半からのことです。この方策によって、医療機関が薬を売るメリットは縮小されました。

 

院外処方箋の増加数によって、医薬分業の進捗状況を知ることができます。外部の保険薬局で薬を購入できるように医療機関が発行する薬の指示書のことを、院外処方箋と言います。医薬分業が進んでいるかどうかは、院外処方箋の数を見ればわかります。00年には5億枚を突破し、03年には分業率が5割を、09年を超えたことから、方策は順調と言えるでしょう。

 

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しかし、医療機関から離れた場所に薬を買いに行くのは面倒であるとか、調剤薬局では新たに調剤料などがかかる為割高であるなどの、分業に対するネガティブな意見も散見されます。また、医師不足などを原因とする経営不振を主な理由に、近年になって再び薬価差益を求める医療機関が院内処方を始めるケースが増えつつあります。

 

医療機関と患者、双方が恩恵にあずかれる、そうした新たな方策が今後求められるでしょう。

 

 

医薬分業は投薬の監視を目的としている

 

医師の処方ミスや、薬の副作用、複数の薬の飲み合わせによる悪影響などを、薬剤師が監視する。それが医薬分業の本来の目的です。それは、薬剤師の本来の責任である、薬の専門家として正しく医薬品を提供する立場を明らかにするとともに、薬剤師資格の価値そのものの向上に繋がります。

 

複数の診療科にまたがって受診する患者が増えているのは、人口の高齢化や、生活習慣病の増加が原因です。受診する科が増えれば、各担当医師たちの連携も困難になってきます。そのため、薬剤師が処方内容の監視をするのは、非常に重要なことです。

 

 

かかりつけ薬局の育成という目的も含んでいるのが医薬分業です。かかりつけ薬局は、医師の代わりに患者がどんな薬を飲んできたかを把握し、管理し、さらに常の健康状態に関する相談にも乗ります。

 

かかりつけ薬局への期待は大きく、また、それを支える医薬分業の定着も、やはり迅速に行われるべきでしょう。無駄な投薬を減らし、国民の医療費に対する公費負担を軽減するためにもです。




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