すべての患者に有効なテーラーメイド治療を追求する

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ヒトゲノムの解読が完了しましたが、遺伝子の配列、変異の違いがわかっても、すぐにテーラーメイド治療が実現できるわけではありません。新しいことがわかると、そのことが新たな課題を生み出します。今後も創薬メーカーは、試行錯誤を繰り返すことになります。

 

すべての患者に有効なテーラーメイド治療を追求する

 

患者個人の特性に合わせて治療を行うことを、テーラーメイド治療といいます。これをターゲット指向治療ソリューションと呼ぶ企業があります。IT技術のパイオニアであるIBM社です。現在の創薬は、二重盲検(思い込み効果を防ぐ治験方法)によるRCT(未作為化比較試験)の方法がとられています。

 

7割の人に効果が見られた場合には、残りの3割は薬の効果が現れない人達ということになります。一方、ターゲット指向治療ソリューションにおいては、その3割の人をその薬が効かない病気にかかっているという判断をし、彼らの持つたんぱく質や遺伝子の解析技術を存分に使って病気を明確にし、一人ひとり有効な薬を提供します。

 

ターゲット指向治療ソリューションは、診断薬、高付加価値製剤、治療用機材、モニター機器、ヘルスケア情報がまとまった、治療用のパックといえますが、人のたんぱく質や抗体由来のバイオ製剤を中心にしています。

 

なぜならば、人以外の生物由来の製剤よりも免疫反応を起こす可能性が低い、体内での分布・代謝・排せつの予測がしやすく開発期間が短いので候補薬が市場にでる確率が上がる、対象患者が少数でも採算のとれる創薬ができる、などの理由があるからです。

 

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拡大する新たな研究分野

 

ポストゲノムの企業の取組みとして、IBMの動きは典型的な動きといえます。他の製薬会社も同じ動きをしています。ゲノムを研究する中で、病気の原因は人種特有の遺伝子や、血縁特有の遺伝子に影響されるだけでなく、一人の人が一生の中で固有の遺伝子の変化が起き、そのことが引き金となることがわかってきました。

 

このような個体内の遺伝子が変化することをエビジェネティクスといい、ポストゲノムの次なる課題となります。新たな研究分野は他にも、細胞の分化と増殖に関する脂質について、細胞間の情報伝達に関する糖鎖について、植物と土壌微生物との共生関係を土台として、安全な生活環境構築するために生物多様性を理解すること、など様々な広がりを見せています。

 

 

最近では、日本で大腸菌より小さいサイズのロボットが開発されました。マイクロバイオ、ナノバイオという領域では、超微細環境で生体機能の研究をするので、このようなロボットを医療用に転用することが考えられています。

 

このロボットをカプセルに入れ、口から飲み込むか、あるいは血管に注射して病床まで届け、がん腫瘍や、病原菌細胞を破壊したり、修復したりしようというものです。このような構想を実現させるためには、製薬メーカーの技術がまたしても必要だといえるのです。




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