医薬品メーカーのIR活動について
ツイート研究開発費が高騰を止めないなかで、各メーカーの重い課題となっているのは安定した資金調達です。その一環として必須要件となっているのが、投資家への情報開示です。これは、株式市場から円滑な資金流入を保ち続けるためです。
IR活動という言葉について説明します。一般的には、賃借対照表や損益計算書といった財務諸表や決算短信の開示をしたり、決算説明会を開いたりするといった意味です。医薬品メーカーとなると、さらに利益に直接影響を与える情報の開示が求められます。例えば、新薬の開発状況や、市場に出ている自社の各製剤の売上状況、製剤の特許の有効期限などがそれにあたります。
過去、医薬品情報について「多い」と指摘されてきたのは、製品の利点のみを強調して欠点には触れないという不完全な説明や、データが開示されない曖昧な説明です。そこで、現在では詳しい資料と共に、利点も欠点も明確に知らしめることが義務付けられています。
また、市販後調査により、製剤の新たな情報が得られた場合はすみやかにデータに反映される事になっています。有効性や安全性に関する情報は、必要不可欠だからです。
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アステラスのIR活動は優良
IR協議会の主催で、96年から始まったIR優良企業賞というものがあります。これは、情報開示の優良な企業を表彰するもので、09年までは毎年医薬品・医療機器メーカーが複数選ばれています。12年にはアステラスとエーザイが多くの企業の中から選出され、まさに製薬メーカーは日本企業におけるIR活動の、長きにわたる草分け的存在であったと言えます。
ネガティブな情報でも正直に開示することが、IR優良企業の選定において高く評価されます。旧・藤沢薬品(現・アステラス)が03年に3回目の受賞をした際は、米国における新薬の認可が遅れるという情報をいち早く告知した点で、その価値が判断されました。
ちなみに、日本証券アナリスト協会も07年度からディスクロージャー(情報開示)優良企業を選定しています。そこでは11年度、アステラスが2期連続で、新規としてオムロンがそれぞれ選ばれました。
近年では、ほぼすべてのメーカーがネット上に自社ページを作り、創意工夫を凝らしてIR情報の開示をしています。その一方、業界全体として決して積極的ではないと言えるのが、投資情報に関連する、株主に対する配当である株主優待以外のサービスについての情報告知です。
大手医薬品メーカーでは、ロート製薬、小林製薬、ゼリア新薬工業など、OTC(大衆薬)のメーカーが株主優待を行っています。海外進出に伴い、株主への対応は医薬品メーカーを評価するものさしとして、これから一層重きを置かれるでしょう。
ですが、医薬品メーカーは営利主義に走ってはなりません。ですので、未来的に見ても、株主優待については消極的であると思われます。
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