胃腸薬は消化剤から制酸剤へ変わってきた

胃腸薬は消化剤から制酸剤へ変わってきた

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農薬のない時代、農産物を通してぎょう虫や回虫が子ども達の腸に住み込んでしまうことがあり、「虫くだし」と呼ばれる薬がよく飲まれていました。現在では、衛生状態が良くなり、虫くだしを使うのは犬や猫だけになりました。

 

胃腸薬は消化剤から制酸剤へ変わってきた

 

胃腸の調子が良くないといっても、さまざまな症状があります。胃もたれ、胸やけ、食欲不振など、原因もひとつではありません。ですから、服用する薬も症状に適したものでなければ、逆効果になる場合があります。胸やけの場合は、胃酸の出過ぎですから、胃の働きを活発にさせる薬を服用すれば、ますます具合が悪くなります。

 

歴史をたどると、病気も社会の変化とともに様々な症状に変わってきています。かつて、栄養不足だった時代に多かった壊血病や脚気は現代では息を潜め、栄養過多による高血圧や糖尿病が増えています。

 

 

胃潰瘍もまた、現代を象徴する病のひとつです。現代の胃潰瘍の多くは、ストレスや偏った食生活、働きすぎによる過労など、社会的環境からくるものだといわれています。実際、阪神・淡路大震災や、東日本大震災の避難所生活者の中で胃潰瘍発症者が急増したという報告があります。

 

これらの多くは、急性胃潰瘍で、ストレスなどにより胃酸が異常に多く分泌され、胃の粘膜を傷つけることで発症します。また、お酒の飲みすぎや、消炎鎮痛剤の服用でも潰瘍ができることがあり、場合によっては吐血することもあります。

 

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近年になり、PPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)といった強い制酸作用を持つ薬剤が登場したことにより、胃潰瘍患者が急激に減ったといわれています。

 

慢性的に胃潰瘍があると、ピロリ菌の感染を防ぐ力が落ちます。胃壁にピロリ菌が感染すると炎症を起こし、胃酸が患部に流れることで重症になります。ピロリ菌はこのように潰瘍を重くし、胃がんの原因にもなるので、慢性胃潰瘍の患者には除菌薬を用い、ピロリ菌を退治します。

 

かつて胃腸薬といえば、暴飲暴食で弱った胃を助ける消化剤や健胃剤といったものがメインでしたが、社会環境の変化した現代では胃粘膜修復剤や、制酸剤の服用が増えてきています。

 

 

増加している神経因性の病気

 

腸の薬としては、便秘や下痢に対して整腸剤が処方されてきましたが、最近、増加している過敏性腸症候群は、ストレスが原因だとされています。症状として女性は便秘、男性は下痢が多く、その他ガスがたまるなどがあります。

 

胃腸薬があまり効かないのが特徴で、自律神経の失調が原因だともいわれています。近年では、過敏性腸症候群だけでなくその他の臓器にも神経因性障害がみられるようになり、精神科領域の薬も併用して処方されるようになってきました。




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