医薬分業における薬剤師の役割について

医薬分業における薬剤師の役割について

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医薬分業の意義は、医師の診断と処方せん発行と薬剤師の処方せんの内容チェックにより、薬物療法の安全を確保することと適正医薬品の選定による医療費節減です。

 

医薬分業における薬剤師の役割について

 

専門性、利便性、費用対効果は?

 

1997年、日本薬剤師会は、薬局の将来あるべき姿を示しました。それは薬局が理想とは大きくかけ離れた様相を示し、社会に取り残されている姿への警告です。

 

「薬局に対して国民はもっと有効活用したいと考えているが、その具体的な姿が見えない。そうなれば、期待すべき姿に自然に移行していくし、医薬分業とはまた違う形もありうる。今がターニングポイントであるかもしれない。改善は急務である。薬剤師会として、国民に自らの意思で、変革の構想やビジョンを示す必要がある。それは、薬の責任者としての不可欠である」

 

これは、当時分業率が23%でしたが、既に指摘されていることです。そして今は60%を超え、最大分業率は80%を超えたところもあるのです。にもかかわらず、当時の指摘は今も何ら変わっていません。薬局に社会は何を求めているか?それは「便利である」「専門家として任せられる」「支払いに応じて適正な効果がある」という結果です。

 

しかし、患者は足を運ぶ手間を惜しみ、医療機関に近い薬局を選ぶのです。このことが、医薬分業・薬局の在り方について患者の意識を変えることなくこの15年以上を経過したことになります。このままでは、医薬分業の意味はないことと理解され、継続は難しいと言えます。

 

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実績作りのための緩和ケア、処方設計などが重要

 

専門性は、もっと個別に丁寧に対応していくこと、例えば、がんや糖尿病などへの専門薬剤師をおく。末期ガン患者の緩和、医師と処方の協働作成、投与後モニタリング、その他ですが、すべて他の機関との連携でできるものです。

 

薬剤師の地道な努力で、そういった実績が生まれるでしょう。それに対して、簡易処方作成や限定範囲での注射などの解禁が得られる可能性もあります。薬剤師の将来像は、現在どれだけの実績を自主的に積みあ上げていくかが重要な時なのです。

 

利便性は今は「医療機関からの距離」です。現在、調剤薬局の売上の94%が処方せんによるものです。これを改善するには、薬の責任者であることを前面に出し、薬についての総合相談窓口を設けることが必要です。調剤だけでなく、OTC薬やサプリメントの知識も必要とされます。

 

費用対効果では、医局の変化を注意する必要があります。医療機関は、コストダウンを図るため、DPC(診断群分類別包括制度)が導入されています。これは、検査、入院、投薬をパッケージにして費用を抑えるのです。このシステムが外来に適応されると、処方せんはたちまちストップします。現に実例があるのです。

 

 

薬局調剤医療費は、25%が薬局調剤技術料です。これも見直しがなされて医療費のマージン程度、欧米では数%、になった場合、多くの薬局は経営困難となるでしょう。その転機は2015年の社会保障カードが運用される時です。多くの薬剤師の仕事が簡素化、データ化されるのです。技術料の見直しは必至です。

 

薬局経営者、薬剤師は、現在の調剤薬局の基盤が非常に危ういものであり、変革が求められていることを自覚しなくてはなりません。もっと、実質を伴った薬の責任者として、理論武装が必要です。

 

 

■薬局のグランドデザイン
日本薬剤師会が1997年位策定した21世紀の薬局像。薬局サービスを地域住民に適切に提供する機能を備えた薬局を自己完結型薬局と規定しその適正数を2万4000薬局とした。

 

■DPC
Diagnosisi Procedure Combinationsの略。診療行為ごとに計算する「出来高払い」方式と異なり、入院患者の病名や症状をもとに手術などの診療行為の有無に応じて、厚生労働省が定めた一日当たりの診断郡分類店数をもとに医療費を計算する「定額祓い」の会計方式




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